<設 立 趣 旨 書>
1.趣 旨
Ⅰ 当会の活動目的
北アフリカに位置するスーダン共和国は、面積約250万平方キロメートルと、アフリカ最大の面積を誇り、人口は3千500万を数えます。1956年の独立以後、断続的に内戦が勃発し、現在では、西部のダルフール州において人道危機が発生するなど、不安定な情勢にあります。
国際機関の想定を基にすれば、障害者の人口はおよそ200万人と推定されていますが、信頼のおける調査が行われていないのが実情です。また、度重なる内戦などの影響により、実際はより多くの人が障害を負っていると考えられます。さらに、1996年から2001年までの国連の対スーダン経済制裁決議の影響もあり、スーダン政府の財政状況は逼迫しており、現状では障害者の教育に十分な予算が割り振られているとはいえません。そこで、私たちスーダン障害者教育支援の会は、長引く内戦や政府の財政の状況により光を当てられることのなかった障害者の教育支援を、当会の基本方針として掲げるに至りました。1948年の世界人権宣言、1989年の子どもの権利条約、そして昨年採択された障害者の権利条約で、繰り返し確認されているように、教育は障害者を含む全ての人に認められなければならない権利です。
また、教育により、私たちはスーダンの障害者が、自ら力を獲得し、より良い社会の創造に参加し、平等な暮らしを実現することを目指しています。すなわち、1981年の国連障害者年で謳われた、完全参加と平等の実現こそが、私たちスーダン障害者教育支援の会の最終目標なのです。
Ⅱ 当会の戦略
前述の最終目標を、教育支援を通して達成するために、私たちは以下の四つの観点から活動します。
● 基礎教育の支援
初等教育は、だれもが有する権利であるにも関わらず、障害児は公教育制度からは周辺化されがちな存在です。国際人権諸条約の観点からも、また、2015年までに初等教育を普遍化するというMDGsの観点からも、障害児の基礎教育の充実は、現在急務の課題だといえるでしょう。具体的な活動として、視覚障害児への点字器具の援助、点字の教科書の調達を含めた学習環境の整備、親や教師のための講習会を企画しています。
● 就労促進のための、情報教育の支援
パソコンに象徴される情報機器は、障害者の社会への参加を促進する上で、強力な味方となります。特に視覚障害者は音声パソコンを駆使することで、健常者との意思疎通の可能性が格段に広がるため、IT技術は就労には欠かせないものだと考えられます。そこで私たちは、障害者の就労を促進するために、情報教育の整備に取り組みます。具体的な活動としては、現在60名の視覚障害学生が在籍するハルツーム大学に、アラビア語のパソコンの音声化ソフトを送ることを計画しています。またソフトのメンテナンスを含めた、IT講師の育成、障害者教育支援研究のモデル事業をハルツーム大学で実施することも予定しています。
● 現地での取り組みの促進
私たちスーダン障害者教育支援の会は、将来に渡って、スーダンの障害者が教育を保障される社会を目指し、スーダン国内での内発的な取り組みを促進します。具体的には、ハルツーム大学を中心とした、支援体制の構築、関係者の講習会、また公衆への啓発活動を計画しています。
● 障害者スポーツの普及
スポーツなどの余暇活動は、日々の生活にゆとりを与えると同時に、私たちが生きていくために欠かすことのできない時間です。これは、障害者の権利条約(第30条)においても確認されています。そこで私たちは、スーダンにおいて、障害者スポーツを普及すると同時に、障害者スポーツの環境整備を計画しています。具体的には、スーダンサッカー協会との共催で、視覚障害者サッカーの講習会を計画しています。また、2003年来続けてきた、視覚障害者サッカーボールの寄贈も続けていきます。
上記の戦略を有効に実施するために、以下の活動にも取り組みます。
・ スーダンの障害者教育の実態調査
・ 他の障害団体や国際協力関連団体とのネットワーク構築
・ スーダンやスーダンの障害者教育についての情報発信
・ 事業を実施するための財源確保
Ⅲ 当会の活動意義
日本に本拠地をおく当会の活動意義を、私たちは次のように考えます。まず、スーダンにおいて、障害者の教育は十分に取り組まれておらず、また、国際援助機関も、人道援助や復興支援に重きをおいてきたため、一刻も早い支援が求められています。この支援は、官民問わず、早急に行われる必要があります。
次に、当会の運営方針は、理事会の大半を占める視覚障害者のスーダン人留学生により立案されます。これは、スーダンで教育を受け、その問題点を認識してきた彼らでこその視点からの運営方針であるため、同国の教育ニーズを的確に捉えていると考えられます。また、私たちの活動により、国連障害者の権利条約で確認された、教育を受ける権利(第24条)、就労の権利(27条)、余暇とスポーツに対する権利(30条)の実現に寄与できるものと確信します。
日本国内での活動意義としては、次のように考えます。
日本はスーダンに取って第2位の輸出先であるにも関わらず、日本社会では必ずしも認知されているとはいえません。これは、ダルフールの人道危機が、諸外国に比べて日本のマスコミでは取り上げられにくいことからも、うかがい知ることができます。私たちは当会の活動を通してスーダンの情報を積極的に発信することで、日本での一層の国際理解教育に貢献できると考えます。内戦、難民、飢餓や貧困など、日本で広められるアフリカのイメージや固定観念にとらわれることなく、スーダンの日常、そして教育の大切さやそれが人々に与える希望の大きさを伝えたいと考えます。
最後に、私たちは日本国内の福祉関係者、国際協力の関係者との協力を目指しております。このことにより、日本の福祉関係者の技術や情報を、スーダンに伝えると共に、日本の福祉の長所と短所を考察する機会になると、私たちは信じます。また国連障害者の権利条約第32条で謳われる、障害分野での国際協力に、日本が積極的に取り組むために、私たちは貢献できると考えます。
Ⅳ NPO法人格申請へ向けて
今年3月に任意団体として歩み始めたスーダン障害者教育支援の会は、今夏、NPO法人格取得の申請を決定しました。助成金取得の際に、法人格が求められることが多かったこと、個人での会計管理の不安定さを解消したかったことなどが大きな理由です。
また、かつて英国の植民地で会ったスーダンでは、肩書きが日本以上に重視され、活動を行う上で公的に認められた身分の重要性を痛感したことも、主な理由です。NPO法人格の取得が今後の活動の鍵を握ると、私たちは考えます。
2.申請に至るまでの経過
私たち、スーダン障害者教育支援の会(以下当会)は、日本へ留学中の4名のスーダン人視覚障害学生の思いがきっかけとなり、その一歩を踏み出しました。祖国スーダンの障害者の教育に関して、できることから貢献したいと、まずは点字用具を贈ることから取り組みました。大学の学園祭に出店した収入を元手に、点字板や視覚障害者サッカーのボールを贈るなどの活動をしてきました。しかし、個人の思いや、その時々に賛同者を募って実施する活動には、やはり限界がありました。そこで2007年2月に、私たちは、より多くのスーダンの障害者により安定した支援をするために、任意団体として当会を設立することを決定しました。
―― 2007年以前の活動実績 ――
2004年:ブラインドサッカーボール1個寄贈。
2005年8月:ブラインドサッカーボール2個を、スーダン盲人連合スポーツ部担当に寄贈。
同月:点字板300個を、ハルツーム州教育相特殊教育係りに寄贈。
2006年12月:点字板25個、ハルツーム州ウンバッダ区の視覚障害受け入れ中核小学校、
視覚障害児担任のハイヤーシュ先生(全盲)に寄贈。
2007年7月26日
特定非営利活動法人スーダン障害者教育支援の会
設立代表者 モハメド・オマル・アブディン